親鸞仏教センター

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The Center for Shin Buddhist Studies

― 「現代に生きる人々」と対話するために ―

今との出会い 第222回「仏教伝道の多様化にいかに向き合うか」

親鸞仏教センター研究員

谷釜 智洋

(TANIGAMA Chihiro)

 近年インターネット並びに電子機器の発展に伴い仏教伝道の方法に多様化がみられる。例えばYou Tubeでは僧侶や寺院が自らのチャンネルを開設し、法話が配信されている。仏教に関連する「法話」・「聞法」等といった言葉をYou Tube上で検索すれば宗派を問わず多くの僧侶が動画を投稿している。なかには数十万回以上再生された動画も存在する。

 新たな仏教伝道の方法は法話に限らない。現代的な音楽に合わせて『般若心経』を読誦する動画も人気を博している。多種多様な入り口を介して仏教に触れてもらう狙いがあるのだろう。

 これらについて賛否はあるようであるが、新たな仏教伝道の試みとして注目されるものである。


 さて、いくつか現在の仏教伝道の方法についてみてきたが、時代に応じた伝道は、常に仏教者たちによって模索されてきた。近代には、叢書を用いた伝道が始まり、時間や場所を問わず、人々が仏教に触れる機会を広げたとも言われている。

 戦後日本、真宗大谷派からも「同朋叢書」が刊行され、同朋会運動の一端を担ってきた。同叢書において人気を博した著者の一人に米沢英雄がいる。彼の代表作である『魂の軌跡』は、当時多くの同朋の心を掴みベストセラーとなり広く親しまれてきた。著作集のあとがきで、『魂の軌跡』について次のように回想している。


文中に『法華経』のことが出ます。真宗に法華経は不穏当だと言われそうですが、要はわかればいいと思っています。日本人だからといって日本料理だけ食べるわけじゃないでしょう[……] 栄養になれば何を食べていいと思います。主体さえ確立出来れば、それでいいのではないか。

(『米沢英雄著作集』第1巻、217頁)


 このように、教理を料理に例え、「栄養になれば何を食べてもいい」と、信仰の「主体」さえ確立することが出来れば、どのような教理に触れてもよいのではないのかという。


 また、米沢は『別冊同朋』の報恩講特集号に次のような文章も寄せている。


人間は何か新しい療法を求めたり、コンピューターによる何々とかにとびついたりします。しかし今新しいものは、やがて古いものになるのです。仏法は永遠に古くならないものです。[……] 真実というのはいつも新しい、この真実をつきつめたところに真宗があるのです。これは流行に左右されません。どんな平凡な、毎日同じような仕事をやっていても、宗教心さえ芽生えておれば、いつも新しく生きておられるのだと思います。

(「真なる故に新しい」『米沢英雄著作集』第1巻、209頁)


 ここで米沢は、新しいものはやがて古いものになるが仏法は永遠に古くならないという。また、仏法を真実という言葉に置き換え、それは流行に左右されないという。


 いつの時代も仏教伝道の方法は様々なものが試されてきた。しかし、方法は問題ではないのだろう。発信側、受信側に限らず、確かな信仰とは何かということが問題ではないだろうか。なるほど、米沢の言葉は流行に左右されるものではない。だからこそ、今も新鮮だ。

(2021年10月1日)

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