親鸞仏教センター

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The Center for Shin Buddhist Studies

― 「現代に生きる人々」と対話するために ―

今との出会い 第211回「#Black Lives Matter ――差別から思うこと」

親鸞仏教センター研究員

谷釜 智洋

(TANIGAMA Chihiro)

 2020年5月、新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、パンデミックを引き起こしているさなか、米国ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人男性の首を圧迫して死亡させるという事件が起こった。この暴力的逮捕の一部始終をおさめた動画がSNS等を介してWEB上に拡散されると、その白人警官に対する抗議の声が全米に広がった。これを機に、2013年にSNSで上おこった「ブラック・ライヴズ・マター」(「Black Lives Matter」以下、「BLM」)の文言を掲げた人権運動が、改めて世界中から注目を集めている。

 

 上記の事件を目の当たりにし、映画監督のスパイク・リーが脚本と制作を手がけた映画「ドゥ・ザ・ライト・シング」(1989年公開)が想い起こされた。舞台は米国ニューヨーク州ブルックリンの黒人地区。市民は連日の猛暑に見舞われフラストレーションが最高潮に達したその日、同地区で飲食店を経営する白人男性と黒人男性の言い争いが、警官を巻き込む騒動になる。結果、白人警官による黒人男性の暴行致死事件が発生し、暴動が起こるといった内容である。なお、この映画はエンドクレジットに入る直前、キング牧師とマルコムXの両氏による以下の言葉が引用される。


【キング牧師】

暴力は、愛ではなく憎しみの糧として、対話ではなく独白しか存在しない社会を生む。そして、暴力は自らを滅ぼし、生き残った者の心には憎しみを、暴力を振るった者には残虐性をうえつける。


【マルコムX】

私は暴力を擁護する者ではないが、自己防衛のための暴力を否定する者でもない。自己防衛のための暴力は暴力ではなく、知性と呼ぶべきである。


 今日、新型コロナウイルス感染症が渦巻く米国社会の異常事態のもとで起きた、白人警官による黒人男性への暴力的過失致死事件は、件の映画に描かれた事柄と共通することとして改めて認識しなければならない。

 冒頭に取り上げた事件を発端として、「BLM運動」に賛同した多くの企業やアスリートたちがそれぞれの立場で抗議の意を表明している。そのなかでも、プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手による抗議の方法は世界中の話題となり、多くの支持を集めている。彼女の勇気ある主張と行動を誇りに思う。


 ハイチ系アメリカ人(父)と日本人(母)を両親にもつ大坂選手は、自身のツイッターで「アスリートである前に黒人女性。私のプレーを見てもらうよりももっと注目すべき重要なことがある」と投稿し、全米オープン前の大会出場を辞退すると表明して、大会主催者の理解を得ただけではない。彼女は全米オープンの競技会場に入場する際に黒人に対する人種差別に抗議するために、暴行の被害者の名を記した「黒色マスク」を着用するという方法で「BLM運動」に呼応したのである。

 この大坂選手なりの抗議のやり方に対して、「プロスポーツの場で抗議を表明するべきではない」とか「スポーツの場に政治を持ち込むな」等、心無い非難もあったが、彼女の行動が勝った負けたで一喜一憂するスポーツ観戦に対する私たちの意識のあり方に一石を投じるものであったことは間違いない。


 上記の白人警官による黒人男性への残虐な暴行致死事件には憤りをおぼえる。ブラック・カルチャーに影響を受けたひとりとして、私もこの運動を支持したい。同時に、そのことと仏教の学びとがどう関係するのかという問いが頭をよぎる。私はまだ十分な言葉をもって語ることはできないが、差別に向き合うなかで今後、その問いについて模索してゆきたい。

(2020年11月1日)

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