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ブックレビュー(書評)
2017年7月
『スクリプトドクターの脚本教室・初級編』
  三宅 隆太 著    [新書館、2015年]

 「スクリプトドクター」とは聞き慣れない言葉だが、さまざまな理由から立ち行かなくなった映画やドラマの脚本(スクリプト)の問題点を明らかにし、問題解決のための手助けをするという、文字通り「脚本のお医者さん」のことだそうだ。映画監督や脚本家としても活躍し、またシナリオ学校や大学で「脚本の書き方」を講じてもいる著者は、日本では数少ないスクリプトドクターの一人でもある。

 本書はそうした著者の経験から書かれた「脚本教室」ということになるのだが、とはいえ脚本執筆のためのテクニカルなノウハウを手っ取り早く伝授するといった類の本とは大きく異なるものでもある。「初級編」の本書で著者がまず求めるのは、初心者が陥りがちな「プロの真似」をすることではなく、「ココロの実感」をともなった「本来の《あなたらしいもの》」を書くことである。本当に自分の感情を動かすことがなければ、読み手の感情を動かすようなドラマを生み出すことなどできないからだ。しかし、それが一番難しいらしい。多くの人は「思い込み」や「決めつけ」に縛られ、自分で自分の感情にフタをしてしまっている。自分自身の「心のブレーキ」を外して「殻を破り」、本来の自分の感情を見つめ直すこと。スクリプトドクターの脚本教室は、この課題からスタートする。

 著者はこの困難な課題に対する取り組みとして、「シナリオ執筆のアートセラピー的な側面」に注目している。要は自分自身の心の問題や葛藤を、物語のなかで展開される作中人物のそれに置き換え、その人物を徹底的に追い込むことによって「殻を破る」ことへと至らせるのである。このような作業は、場合によって書き手に大きな「心の痛み」を引き起こすが、しかし書き手の葛藤を物語のなかで徹底的に描くことにより脚本は格段に面白くなり、かつそれは書き手の「殻を破る」ことにも繋がるような、「アートセラピー」になるのである。

 以上は、本書の内容のごく一部を紹介したにすぎない。しかし私はこれを読み、書くことと「ココロの実感」とのダイナミックな関わりについてあらためて考えさせられた。自分が書くものに「ココロの実感」がどれほどともなっているのか。自分の感情の動きを見つめ、本来の《自分らしいもの》に触れることができているのか。

 もとより私が普段多く書くものといえば、脚本ではなく、学術論文である。それでもそこに自分自身の葛藤が徹底したかたちで表現されていなければ、読み手に何かを感じさせることはできないのかもしれない。つまり書くことを通して自分自身が変わるような経験がなければ、本当に人に伝わるものにはならないのかもしれない。あるいは論文執筆にもアートセラピー的な効果がないだろうか?そのようなことまで考えさせる本書の射程は、実に広いものだと言えるだろう。ちなみに『スクリプトドクターの脚本教室』シリーズは、「上級編」までの展開が予定されている。

長谷川 琢哉(親鸞仏教センター研究員)

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