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ブックレビュー(書評)
2014年6月
『ソクラテスの弁明』
  プラトン 著  納富信留 訳  光文社古典新訳文庫 本体895円(税別)

 岩波文庫版のいわゆる「旧訳」を読んだのは何年前だろうか。まったく思い出せないが、ソクラテスの裁判や死に際してのエピソードは、なぜかよく覚えている。
 そのような、忘れ去ったようで不思議と脳裏に刻み込まれている「記憶」が、鮮明に呼び起こされる一冊である。訳者は、国際プラトン学会前会長の納富信留氏。日本のみならず、世界を代表するプラトンの研究者であり、同時にまた卓越した読者でもある。
 「新訳」が、かならずしも「良訳」とはかぎらない。そもそも何をもって「良い/悪い」を判断できようか。原典に対する忠実さか、あるいは現代に通じる言葉であるか否か。
 そういった面倒なことを考えるまでもなく、読み進めるにつれて知らされてくるものがある。ソクラテスが「皆さん」と呼びかける相手は、決して物語のなかの「アテナイ市民」には限らない。現代を生きる私たちをも「裁判員」の席へ座らせる、それがこの対話篇を書きとめたプラトンのねらいではなかったか。
 ところで、一般にソクラテスの説く知恵は「無知の知」と称される。しかし、訳者はその周知されている理解は誤りで、ソクラテスが自覚したのは「知らないので、ちょうどそのとおり、知らないと思っている」という「人間的な知」、つまり自己の「不知(アグノイア)」であると指摘する。そして、この「不知」を自覚せずに、曖昧な思い込み(ドクサ)のなかで人生を送っていく生き様こそ、最悪の恥ずべき「無知(アマティアー)」ではないかと。裁判中、死刑の瀬戸際にあったソクラテスが自らに問うたとされる次の言葉は、私たちに何か忘れていたものを想起させる。

それで君は、ソクラテスよ、恥ずかしくはないのかね。今にも死ぬかもしれない危険をもたらす、そんな生業に従事していて
(第一部「告発への弁明」)

 巻末には、詳しい「解説」とプラトン対話篇を読むための「手引き」が収録されている。「良訳」にとどまらず、プラトン哲学に入門するための「良書」である。
名和達宣(親鸞仏教センター研究員)

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