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研究活動報告
源信『一乗要決』研究会
 本研究会では、平安中期に活躍した恵心僧都源信(942 - 1017)が叙述した『一乗要決』をテキストとして取り上げ、その思想を究明する。今年度は『一乗要決』原典の解読と本文の考察を試みた。本書の主題は一切皆成という点であるが、それと対応する源信の種姓差別の視座も注目される。仏性論争・三一権実論争における極めて重要な論点は凡夫/聖者といった機根をめぐる問題である。源信がどのような理論に基づき法相学派の五性各別説を批判していくのか、その一端を紹介したい。

『一乗要決』における五性各別説批判

親鸞仏教センター研究員
藤村 潔
 『一乗要決』は、東アジアに広まった仏性論争・三一権実論争を思想史的に網羅し、終極的には一乗真実・悉有仏性といった一切皆成の立場を表明している。そのため、遠因には玄奘(602 - 664)の新訳仏典をめぐる中国唐代の論争を取り扱い、近因には最澄(766・767 – 822)と徳一(生没年未詳)の天台対法相といった両学派の論争を継承している。源信は天台学派に属する学匠であるため、基本的に最澄の説を支持している。とはいえ、源信の理論は、単なる先学の焼き直しとは言えない。一切皆成説として判然としない点が多くあるために、むしろ中国の論争者や最澄以上に経文の原典を読み込み、争点を敷衍しようとしている。

 源信は唐代論争の立役者である法宝(627頃-706、710)と慧沼(648・650 - 714)の論難を広く取り扱っている。慧沼とは、法相学派を確立した慈恩大師基(632 - 682)の高弟であり、新訳唯識の教理体系を構築した重要人物である。慧沼は『能顕中辺慧日論』(以下、『慧日論』)という文献を執筆し、従来の旧訳経論に基づく「二乗作仏」、「一闡提成仏」をめぐる一切皆成説の解釈を批判していく。そのため論争史の中では決して看過できないテキストである。ところが、平安初期の最澄が遺した文献を参照する限り、慧沼の『慧日論』を披閲した形跡はほぼ見えない。徳一が『慧日論』の註釈書とされる『慧日羽足』(佚書)を撰述しているため、恐らく最澄は論争の中で慧沼の説をある程度理解していたと想像されるが、『慧日論』の本文を正確に読解できたとは言い難いのである。こうした事情を知り得てなのか、源信の『一乗要決』では『慧日論』を頻繁に引用し、慧沼が説き明かす法相教理を批判している。この点を考え合わすと、同じ仏性論争とはいえ、最澄と源信の間には思想史的な断層があると考えられる。

 最澄は最晩年に『法華秀句』を撰述し、仏性論争・三一権実論争の中で『法華経』が最勝の教説であると宣説した。こうした法華最勝の思想はもちろん源信も受容しているが、しかし『一乗要決』は、それ以上に悉有仏性の面、すなわち『涅槃経』の教説に注目している。天台教学では五時教判に基づく法華涅槃の醍醐味の立場を採り、この二経は至極の同味であると規定する。ところが源信は、『法華経』以上に『涅槃経』の教説を多く引用している。こうした背景には救われがたい存在、すなわち一闡提成仏をめぐる論点に関心が高かったと推察できる。法相学派において『涅槃経』の一闡提とは、五性各別説による「無性有情」に置換される。ゆえに、「一闡提=無性有情」として会通するため、理論上不成仏と論証される。こうした背景には、『入楞伽経』『仏地経論』『瑜伽師地論』『成唯識論』から生み出される無性有情の概念が有力な典拠としてある。それに対して源信は、『一乗要決』の中で『涅槃経』の原典を精読し、新訳唯識の教理から提出される無性有情の実在説を否定し、「一闡提≠無性有情」と論証する。そこには、天台学派の著述のみならず、涅槃学として権威ある法宝の『一乗仏性究竟論』が明かした一乗仏性義に依拠する姿勢もあった。

 つまり、『一乗要決』とは東アジアの仏性論争を鮮明にする文献であると同時に、法相教理を批判していく中で、源信自らが悉有仏性説を宣揚する畢生の書と理解することができよう。
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