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研究活動報告
聖典の試訳『尊号真像銘文』研究会
 当センターではこれまで、「『聖典』の試訳」と題して、親鸞聖人の教え・聖教(しょうぎょう)のこころを、現代語で表現することを試みてきた。『歎異抄』、『唯信鈔文意』の後を受けた、『尊号真像銘文』研究会は、2011年6月から2014年6月まで、内記洸元研究員が担当し、「本巻」を読了した。研究会は、2018年4月より再開し、現在、「末巻」を読み進めている。ここでは、再開にあたって、受け継がれてきた願いを報告する。
「『聖典』の試訳」
『尊号真像銘文』研究会を
    再開するにあたって


親鸞仏教センター嘱託研究員
菊池 弘宣

■ 『尊号真像銘文』の位置
 『尊号真像銘文』とは、親鸞聖人の最晩年の著作である。当時、本尊として掲げられていた阿弥陀如来の名号(=尊号)や祖師方の絵像(=真像)に付された讃嘆の文(=銘文)を、親鸞聖人が、カナ文字交じりの文で、易(やさ)しく解説したものである。「諸仏方が、讃嘆された言葉と共に、世界に散っている。それを親鸞聖人が解説される。それは、時間・空間を超えて見渡されるような「親鸞聖人のコスモス(宇宙観)」である」という、研究会 で聞いた言葉が深く心に残っている。
 伝わっているものには、巻末に「愚禿親鸞八十三歳 書写之」という識語(しきご)がある「略本」と、「愚禿親鸞八十六歳 書之」と記されている「広本」との二種類がある。
 その、親鸞聖人の83歳から86歳における、創作意欲の背景にあるのは、長男・善鸞義絶事件に関連する、関東教団における揺らぎであり、その念仏の僧伽(さんが)に対する責任感覚であると言われている。
 課題的に、つづめて言えば、親鸞聖人が、関東の門弟における信心の確立を念じ、法然上人の御弟子方が示す変貌(へんぼう)・異義を歎(なげ)き、師・法然上人の恩徳に謝念を捧(ささ)げつつ、『選択集』を顕彰するかたちで、自身における信心の普遍性を確かめ直している。それは親鸞聖人が、『尊号真像銘文』の結びに、自身の『正信偈』の文の二十句を置き、正しく定まった信心を、自らの解説をもって表明しているのと、課題的には、通底しているといえるのではないか。
 そして、『尊号真像銘文』が、『唯信鈔文意』や『一念多念文意』と同様に、漢字のみではなく、カナ文字交じりで記された「仮名(かな)聖教」であることからも、それは、関東の門弟方に向けられた、メッセージという位置があるにちがいない。
 『唯信鈔文意』の末尾には、「いなかのひとびとの、文字のこころもしらず、あさましき愚痴きわまりなきゆえに、やすくこころえさせんとて、おなじことを、たびたびとりかえしとりかえし、かきつけたり」(『真宗聖典』559頁)とある。つまり、『尊号真像銘文』を含む「仮名聖教」とは、親鸞聖人が、「関東の門弟方」に、難解な漢文で伝えられてきた聖教のこころを、易しく領解(りょうかい)させようと願って、煩悩の身に寄り添いながら、繰り返し繰り返し、書き記した書物であると受けとめることができる。
 『尊号真像銘文』に通ずるものに、親鸞聖人の真像であり、銘文が記されている、「安城(あんじょう)の御影(ごえい)」があげられる。その銘文とは、『無量寿経』の三文と、天親菩薩の『浄土論』の文を置き、『正信偈』の文の二十句で結ぶという、『尊号真像銘文』の構成と合致するものである。またそれは、三河地方の、縁ある地域の道場教化を荷(にな)ったと言われている。
 そして現在でも、「尊号・真像・銘文」は、寺院や道場など、浄土真宗に縁のある場を開く、基(もとい)になっていると感じる。それは、単に個人にとどまらない、「場を開く」という特性があるのだと思う。それが、現代とどう切り結ばれるのか。そこに、我々が見据えるべき問題と課題がある。

■ 「『聖典』の試訳」の趣旨・「現代語化」の願い
 「『聖典』の試訳」とは、親鸞聖人の教え・聖教のこころを、現代語で表現する試みである。それは、「現代人が、『聖典』の言葉に親しめるように、「教えの言葉(原典)」に触れる契機となるように」という趣旨のもとに行われてきた。先に述べた『唯信鈔文意』に示される、「やすくこころえさせんとて、おなじことを、たびたびとりかえしとりかえし、かきつけたり」という、親鸞聖人の姿勢を仰ぎ、鏡とするものである。
 その「現代人」といっても、それは、直面する現実生活からの問いかけと、親鸞聖人の教えとしての呼びかけとを受けて、応答していくこの私自身のことであり、自分自身を外して他ではない。つまりは、現に今、自身の抱える苦悩から本当に解放されていくような、「教えの言葉」に出遇(あ)うということこそが、根本の願いである。またそれが、「現代に生きる人々」に本当に通じていく、普遍性のあるものなのか否かを、表現して確かめていくのである。
 そもそも、「現代人」にとっての躓(つまづ)きは、種々の理由で、原文を読めないことにあると思う。また、逐語訳(ちくごやく)的な現代語訳を読んでもよくわからない、苦悩から本当に解放されることがない、という問題もある。
 この研究会では、原文を繰り返し読んで、意を取りつつも、単に逐語訳だけをするというのではない。親鸞聖人の思想・信念の核心をたずねあて、「現代に生きる人々」に届くように、読んでわかるようなものを作り出すという、「現代語化」を推し進めている。それはまた、親鸞聖人における信心が何のためのものであるかを確かめ、訴えかける試みでもある。
 研究会は時に、一語を検討するのに侃々諤々(かんかんがくがく)の議論で、一回の時間を使い切ることもある。自分一人の力では、言葉一つも、到底生み出せるものではないと痛感させられている。周りの方々からご指摘をいただき続けて、悪戦苦闘する中で、ようやく、やっと気づかされていく。そのようにして、親鸞聖人のもとへと導かれていくように感じている。場があることのありがたさを思う。

(文責:親鸞仏教センター)

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