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研究活動報告
聖典の試訳『尊号真像銘文』研究会
■ 問題提起
 源空(法然)聖人の『選択集』に関する三つの銘文のうち、二つ目の銘文の主軸となるのは、冒頭の「夫速欲離生死」という言葉である。「それ、すみやかにとく生死をはなれんとおもえ」と、親鸞が聞きとめた師・法然の教えの言葉であり、如来の本願からの呼びかけである。

 つまり、私たちがいま、一刻も早く生死という苦悩から解放されようと願うところに、阿弥陀の浄土との接点はある。それは、法門・仏陀の教えとしてあるというのである。裏を返せば、苦悩をごまかすところに、本来の意味で、浄土との架け橋はないということであろう。自身の抱える苦しみを大切にして、本当に解決する道筋としての浄土を求めなさいという、親鸞からのメッセージであると受け取った。 (親鸞仏教センター嘱託研究員 菊池 弘宣)
聖典の試訳(現代語化)
『尊号真像銘文』末巻⑤ 「源空聖人の真像の銘文(『選択集』に関する銘文)」2/3

原文
 比叡山延暦寺宝幢院黒谷源空聖人の真像

(中略)※中略部分は『親鸞仏教センター通信』第七八号に掲載

 また曰わく、「夫速欲離生死 二種勝法中 且閣聖道門 選入浄土門。欲入浄土門 正雑二行中 且抛諸雑行 選応帰正行。欲修於正行 正助二業中 猶傍於助業 選応専正定。正定之業者 即是称仏名。称名必得生 依仏本願故」文
 またいわく、「夫速欲離生死」というは、それ、すみやかにとく生死をはなれんとおもえとなり。「二種勝法中 且閣聖道門」というは、二種勝法は、聖道、浄土の二門なり。且閣聖道門は、且閣は、しばらくさしおけとなり。しばらく聖道門をさしおくべしとなり。「選入浄土門」というは、選入はえらびていれとなり。よろずの善法のなかに、えらびて浄土門にいるべしとなり。「欲入浄土門」というは、浄土門にいらんとおもわば、というなり。「正雑二行中 且抛諸雑行」というは、正雑二行ふたつのなかに、しばらくもろもろの雑行をなげすてさしおくべしとなり。「選応帰正行」というは、えらびて正行に帰すべしとなり。「欲修於正行 正助二業中 猶傍於助業」というは、正行を修せんとおもわば、正行助業ふたつのなかに助業をさしおくべしとなり。「選応専正定」というは、えらびて正定の業をふたごころなく修すべしとなり。「正定之業者 即是称仏名」というは、正定の業因は、すなわちこれ仏名をとなうるなり。正定の因というは、かならず無上涅槃のさとりをひらくたねともうすなり。「称名必得生 依仏本願故」というは、御名を称するは、かならず安楽浄土に往生をうるなり。仏の本願によるがゆえなり、とのたまえり。

現代語化
 比叡山延暦寺宝幢院黒谷源空聖人の真像

 (中略)※原文参照

 また曰わく、「夫速欲離生死 二種勝法中 且閣聖道門 選入浄土門。欲入浄土門 正雑二行中 且抛諸雑行 選応帰正行。欲修於正行 正助二業中 猶傍於助業 選応専正定。正定之業者 即是称仏名。称名必得生 依仏本願故」文
 また以下のように言われている。「夫速欲離生死」というのは、まず、速やかに一刻も早く生死という苦悩を離れようと願いなさいということである。「二種勝法中 且閣聖道門」について、「二種勝法」とは、聖道門と浄土門という仏道における二種類の勝れた法門である。「且閣聖道門」の「且閣」とは、いったん(聖道門の教えを)そのままにして置いておきなさいというのである。「選入浄土門」の「選入」とは、選んで入りなさいというのである。すべての善である教法の中にあって、選んで浄土門に入りなさいというのである。「欲入浄土門」というのは、浄土門に入門しようと願うならば、ということである。「正雑二行中 且抛諸雑行」というのは、正行と雑行(正行以外の諸善万行)の二つの行の中で、いったん様々な雑行を投げ捨ててそのまま置いておきなさいというのである。「選応帰正行」というのは、選んで正行に帰しなさいというのである。「欲修於正行 正助二業中 猶傍於助業」というのは、正行を修めようと願うならば、正定の業(称名念仏)と助業の二つの中で、助業はそのまま置いておきなさいというのである。「選応専正定」というのは、選んで正定の業を、二心なく一筋に修めなさいというのである。「正定之業者 即是称仏名」というのは、正定の因となる行為は、すなわちそれこそが、阿弥陀仏の名(南無阿弥陀仏)を称える念仏である。正定の因というのは、必ずこの上ない涅槃というさとりを開く種ということである。「称名必得生 依仏本願故」というのは、阿弥陀仏の尊い名を称するという在り方は、必ず安楽浄土に往生することを得るのである。それは、阿弥陀仏の本願に依るからである、と源空聖人はおっしゃっている。

《語 註》

聖道門:「門」とは法門、教えを指す。現実のこの世界において、聖者の位に入り、仏陀という果を得ると教えるのが聖道門である。

浄土門:阿弥陀仏の浄土において、この上ない涅槃というさとりを証しすると教えるのが浄土門である。

正行:正しく阿弥陀仏の浄土に往生することを実現する行。『無量寿経』・『観無量寿経』・『阿弥陀経』などを根拠とするもので、読誦・観察・礼拝・称名念仏・讃嘆供養の五種の行を五正行という。

正定之業:如来が選択した、一切衆生の浄土に往生することが正しく定まる業。五種の正行の中の称名念仏をいう。

助業:五種の正行の中の称名念仏以外の読誦、観察、礼拝、讃嘆供養の四種の行をいう。称名念仏の助成となる業であるから、助業という。

■現代語化をめぐって

 源空(法然)の主著『選択集』のテーマである三つの選び。そこに通じるキーワードとして、親鸞は「且閣」の語を見出し、「しばらく(且)」「さしおく(閣)」と了解した。それをここでは、「いったんそのままにして置いておく」と現代語訳した。しかし、「しばらく(且)=いったん」という言葉がつくと、聖道門の修行にもう一度戻っていくようなニュアンスを受ける。ここをどう考えていくのかが現代語化のポイントである。そこには、親鸞が『教行信証』「信巻」に記す、「しばらく(且)疑問を至してついに明証をいだす」(東本願寺出版『真宗聖典』、二一〇頁)という表現に重なるものがあるように思われる。

 すなわち、この二つ目の銘文には、求道的な疑問を抱いて、聖道門と浄土門、雑行と正行、自力の心と本願他力、二つの間を右往左往しながら、そのまよいを断ち離れようとする親鸞の悪戦苦闘の歩みが読み取れるのではないか。そして最後に促すのは、「さしおくべし」という師・法然の教えを通して、親鸞が聞きとめた如来の本願の呼びかけであり、それに帰依する自身の決断のところに、「因」があると言えるのではないだろうか。

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