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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2019年3 月15日、東京大学大学院総合文化研究科准教授の山本芳久氏をお招きし、「現代と親鸞の研究会」を開催した。トマス・アクィナス(1225頃 - 1274)はカトリック神学に極めて大きな影響を与えた神学者であり、山本氏は日本におけるトマス研究の第一人者である。本研究会では特に「恩寵(おんちょう)と自由意志」にテーマを絞り、非常に刺激的な問題提起をいただいた。ここに、その一端を報告する。 (親鸞仏教センター研究員〔当時〕 青柳 英司)
トマス・アクィナスにおける「恩寵」と
「自由意志」


東京大学大学院総合文化研究科准教授
山本 芳久 氏

■ 1、神によって動かされた自由意志
 トマスの主著である『神学大全』の中に、「人間は恩寵の外的扶助(ふじょ)なしに、自分自身によって自らを恩寵へと準備することができるのか」という項があります。「自らを恩寵へと準備する」とは、「回心(かいしん)する」ということです。

 この問題に対してトマスはまず、「神への人間の回心はたしかに自由意志によって為される」と言います。人間が救われるための不可欠な要素として、人間の自由意志を重視したのです。
 ただ、トマスは同時に、それが可能であるのは神のはたらき、つまり恩寵があるからだと言います。人間は回心することを神によって命じられており、人間は自由意志に基づいて回心することが可能なのですが、それが可能であるのは、神が人間の自由意志を神へと向けさせているからだと。トマスは恩寵と自由意志との関係を、このようなある種の入れ子構造で考えているのです。

 さらに別の箇所では、「恩寵の賜物(たまもの)を受けるための準備を為すところの、自由意志の善い運動そのものも、神によって動かされた自由意志のはたらきなのである」と言っています。ここでは「神によって動かされた自由意志のはたらき」という、非常に微妙な表現が使われています。神によって動かされているのであれば、自由意志ではないのではないかと考えたくなります。しかし、何かに心を動かされることと、何かに強制されることとは、必ずしも同じではありません。

 たとえば、ダンテ(1265 - 1321)の『神曲』に心を動かされて文学研究者となった、という例を考えてみましょう。この場合、文学研究者になるということは、別に必然的に動かされたからではありません。ダンテの『神曲』によって心を揺り動かされても、文学研究者でない仕事を選択することも十分に可能だったでしょう。何かによって心を動かされることと、それによって強制されることは、別のことなのです。

■ 2、恩寵の必然性
 この「必然性」について、もう少し見ていきましょう。『神学大全』の中に、「恩寵へと自らを準備する者、あるいは自らが為しうることを為す者にたいして恩寵は必然的に与えられるか」という項があります。

 この問題に対してトマスは、2 つの仕方で考察をしています。1つは、人間の自由意志の力に着目したものです。すると「人間がいくら自由意志で神の恩寵を受けるべく自らを整えようとしたからといって、神の恩寵が与えられる必然性はない」ということになります。これは当然のことで、もしも人間が神の恩寵を必然的に得ることができるのであれば、神の超越性はなくなってしまいます。神が人間の僕(しもべ)のようになってしまいます。人間の行為に応じて神が必然的に何かをしてくれるということになってしまえば、それはもはや、神と呼ぶに値(あたい)するものではないでしょう。

 もう1つは、人間の自由意志が神の恩寵によって動かされている点に着目したものです。この場合は、神の恩寵を受けることに、ある種の必然性が見出だされます。その際に注目すべきは、その必然性が「強制の必然性」ではなく、「不可謬(ふかびゅう)性の必然性」であるとされる点です。
 人間の自由意志が神によって動かされるということは強制ではないですが、神が恩寵を与えようとする者には、必ず恩寵が与えられるということです。神であるのだから、間違えようがない。間違えようのない仕方で、必然的に恩寵が与えられるということです。

 以上のようにトマスは、神が徹底的に助けつつも、人間が自由意志で善を行い、功徳を実現するのだと考えました。しかし、人間の自由意志がはたらきを為すことができるのも、神の恩寵が共にはたらいているからです。人間が善を為すことができるのも、神の秩序づけが前提になっています。このようにトマスは、恩寵を軸としつつ、絶妙な仕方で両者を、不可欠な要素として統合しているのです。
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