親鸞仏教センター
お問い合わせ
 
「現代を生きる人々」と対話するために
HOME親鸞仏教センター概要アクセスサイトマップ
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内ブックレビュー
 HOME > 研究活動報告 > 現代と親鸞の研究会
研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2017年6 月6 日、哲学者の岸見一郎氏をお迎えし、「よく生きるということ」というテーマで「現代と親鸞の研究会」を開催した。氏は、専門のギリシア哲学と並行してアドラー心理学を研究され、人間の本当の幸福とは何かということを深く探求されている。  今回は、プラトン、アルフレッド・アドラー、三木清などの言葉を通して、「幸福」と「成功」との違い、「対人関係のなかでの幸福」ということなどを丁寧にお話しいただいた。ここにその一部を紹介する。 (親鸞仏教センター嘱託研究員 大谷 一郎)
よく生きるということ

哲学者
岸見 一郎氏

■ 私に影響を与えた人々
 私の研究のベースはギリシア哲学です。哲学というのは言葉も概念もギリシアから始まったものなので、まずギリシア、特にプラトン哲学を学び、そこから出られないで今に至っています。
 その後、1989年にオーストリアの精神科医、心理学者であるアルフレッド・アドラーの思想に触れました。私自身の子育てに関わるなかで出会い、私のなかで無視できない存在として位置づけられる思想家になりました。もう一人が三木清です。三木に触れたのは高校時代です。高校の倫理社会の先生が京都帝国大学で哲学を学ばれた方でした。西田幾多郎の弟子にあたる人であり、三木とも年の近い方だったのですが、一切、京都学派の思想には触れず、西洋哲学の思想をたたき込んでくださいました。なぜあえて触れられなかったのかいろいろあるとは思いますが、そのころから三木清はずっと気にかかる存在で折りに触れて読み続けてきました。

■ 個人の幸福の優先
 亡くなられた哲学者の池田晶子さんが、幸福について多くの哲学者が書こうとしてきたが、すべて頓挫した、ということを言っています。私は、幸福について考えないで生きることはそもそもできないのではないかということを、学生時代から考えています。
 問題提起という形で言わせていただきたいのですが、個人の幸福の欲求が抹殺されてはいけないと三木清は言っています。抹殺されてはいけないということを言わなければいけないということは、逆に言うと抹殺されそうな時代に生きていたということです。同じことが今の時代にも当てはまるということを、今回、『人生論ノート』を読み返してあらためて思いました。人は社会から離れて生きることはできないので、いつの時代も自分だけが幸福になることはできません。しかしながら、個人は社会に対して独立であるということ を認めなければならないと思います。今の時代は、みんなのためということを言います。みんなが個人に優先するというような考え方をもつ人が多い。ですから、「私は私の人生を生きる」というようなことを言うと利己主義でエゴイズムだとたたかれます。しかし、私は何よりも個人の幸福を優先しないといけないと思います。

■ 成功と幸福
 三木清はこう言います。「成功するということが人々の主な問題となるようになったとき、幸福というものはもはや人々の深い関心でなくなった」(『人生論ノート』、新潮社)と。また、「成功と幸福とを、不成功と不幸とを同一視するようになって以来、人間は真の幸福が何であるかを理解し得なくなった」(同上)と戦前に書いています。そしてさらに、成功は一般的なもの、量的なものであり、他方、幸福は各人のもの、質的なものであるといいます。私は、これはとても深い洞察だと思っています。
 また、三木はもう一つ論点を挙げています。幸福は存在に関わり、成功は過程に関わるということです。良い学校や良い会社に入るために努力し勉強する。そういう過程を経て初めて手に入れるものは、実は幸福ではなくて成功なのだということです。それに対して幸福は過程ではないのです。何かを達成しなくても、今こうして生きていることがそのまま幸福だということです。つまり、成功は直線的な向上であるのに対して、幸福には本来進捗(ちょく)というものはないのだということです。目的論の立場に立てば、ある経験をしたから不幸になるわけでもなく、幸福になるわけでもありません。何かを経験することや、将来何かを達成することとはまったく関係なく、今、人はこのままで幸福であるのです。
■ 対人関係のなかの幸福
 結論的な話でいうと、対人関係のなかでしか人は幸福になれないのです。アドラーは、あらゆる悩みは対人関係の悩みであるという言い方をしています。対人関係のなかで傷つくことを恐れる人はいます。ところが、対人関係は幸福の源泉でもあるのです。人は人との関係のなかにあって、初めて生きる喜び、幸福であるという感覚をもてるということも、本当だと私は思うのです。
 対人関係に入っていくには、自分に価値があると思えなければなりません。アドラーは自分に価値があると思えるときに勇気をもてると言っています。この勇気は対人関係のなかに入っていく勇気です。自分に価値があると思えるためには貢献感が必要です。まず自分の問題として何ができるかを考え、できることをやっていくのです。
 今の時代は、生きる人の価値を生産性にしか求めないということが大きな問題だと思います。何ができるかということにしか価値をおかない。ですから、高齢の方、病気の方は生きている必要がないというような考え方をしている人の割合が大きいように思います。相模原で非常に不幸な事件がありましたが、また同様の事件が起こらないか危惧(きぐ)しています。そういう世間の価値観を完璧に転倒する、ひっくり返さなければいけないと思う のです。
(文責:親鸞仏教センター)
岸見 一郎(きしみ いちろう)氏
哲学者
 1956年、京都府生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。京都聖カタリナ高校看護専攻科(心理学)非常勤講師。
 著書に、『アドラー 人生を生き抜く心理学』(NHKブック、2010年)、『生きづらさからの脱却 アドラーに学ぶ』(筑摩書房、2015年)、『幸福の哲学 アドラー×古代ギリシアの智恵』(講談社、2017年)、『三木清『人生論ノート』を読む』(白澤社、2016年)など多数。
 共著に、『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社、2013年)、『幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え供戞淵瀬ぅ筌皀鵐票辧2016年)など多数。
 訳著に、アドラー『人生の意味の心理学(上・下)』(アルテ、2010年)、プラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社、2015年)など多数。
 また、親鸞仏教センター情報誌『アンジャリ』第33号(2017年6 月1 日発行)に「偽りの結びつきから真の結びつきへ」をご執筆いただいている。
Backnember ページトップへ
公開講座 親鸞思想の解明 現代と親鸞の研究英訳『教行信証』研究会
清沢満之研究会 聖典の試訳『尊号真像銘文』研究会 「『教行信証』と善導」研究会
『西方指南抄』研究会親鸞仏教センター研究交流サロン インタビュー
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内バックナンバー一覧
親鸞仏教センター
MAP
親鸞仏教センターfacebook

親鸞仏教センター [真宗大谷派]<br>〒113-0034 東京都文京区湯島2-19-11
TEL 03-3814-4900 
FAX 03-3814-4901 
mail:shinran@higashihonganji.or.jp
 
掲載の記事・写真の無断転載を禁じます
Copyright©The Center for Shin Buddhist Studies. All rights reserved.
ホーム 親鸞仏教センター概要 講座のご案内 スタッフ紹介 バックナンバー一覧 リンク サイトマップ アクセス